漢方医学では、五味(甘味、酸味、辛味、苦味、鹹味)と呼ばれる5つの味と、それぞれの味に関連する臓腑や体調との関係性を重視します。
好む味と関連する症状について、いくつかの例を以下に挙げます。
甘味を好む場合
- 脾(ひ)が弱っている可能性があります。脾は、胃腸の働きを助け、消化吸収を司る臓腑です。甘味は脾を補う作用があるため、甘味を好む人は、胃腸が弱く、消化不良や下痢、便秘などの症状が現れやすい傾向があります。
- ストレスや疲労が溜まっている可能性があります。ストレスや疲労を感じると、脾の働きが弱くなり、甘味を欲するようになります。
- 甘いものを食べ過ぎている可能性があります。甘いものを食べ過ぎると、味覚が鈍くなり、より甘いものを欲するようになります。
酸味を好む場合
- 肝(かん)が弱っている可能性があります。肝は、ストレスや疲労を解消し、デトックスを司る臓腑です。酸味は肝を補う作用があるため、酸味を好む人は、ストレスや疲労を感じやすく、イライラや不眠、頭痛などの症状が現れやすい傾向があります。
- 胃酸不足の可能性があります。胃酸は、食べ物の消化を助け、殺菌作用があります。胃酸不足になると、酸っぱいものを欲するようになります。
- 酸っぱいものを食べ過ぎている可能性があります。酸っぱいものを食べ過ぎると、味覚が鈍くなり、より酸っぱいものを欲するようになります。
辛味を好む場合
- 肺(はい)が弱っている可能性があります。肺は、呼吸を司る臓腑です。辛味は肺を補う作用があるため、辛味を好む人は、風邪や咳、鼻水などの症状が現れやすい傾向があります。
- 血行不良の可能性があります。血行不良になると、体が冷えやすく、辛味を欲するようになります。
- 辛いものを食べ過ぎている可能性があります。辛いものを食べ過ぎると、味覚が鈍くなり、より辛いものを欲するようになります。
苦味を好む場合
- 心(しん)が弱っている可能性があります。心は、精神的な安定を司る臓腑です。苦味は心を落ち着かせる作用があるため、苦味を好む人は、不安や心配事が多い、不眠などの症状が現れやすい傾向があります。
- 胃腸の熱が溜まっている可能性があります。胃腸の熱が溜まると、苦味を欲するようになります。
- 苦味のあるものを食べ過ぎている可能性があります。苦味のあるものを食べ過ぎると、味覚が鈍くなり、より苦味のあるものを欲するようになります。
鹹味を好む場合
- 腎(じん)が弱っている可能性があります。腎は、水分代謝を司る臓腑です。鹹味は腎を補う作用があるため、鹹味を好む人は、むくみや頻尿、腰痛などの症状が現れやすい傾向があります。
- 塩分不足の可能性があります。塩分不足になると、体が塩辛いものを欲するようになります。
- 塩辛いものを食べ過ぎている可能性があります。塩辛いものを食べ過ぎると、味覚が鈍くなり、より塩辛いものを欲するようになります。
上記はあくまでも目安であり、個人の体質や体調によって異なる場合があります。
好む味が偏っている場合は、その原因を探り、改善することが大切です。
漢方薬や食生活の改善などを通して、五味のバランスを整えることで、心身の健康維持に役立てることができます。
五味と具体的な食材例
漢方における五味(甘味、酸味、辛味、苦味、鹹味)と、それぞれの味に関連する食材例を以下にまとめました。
甘味
- 味覚:甘い
- 身体への作用:脾(ひ)を補い、胃腸の働きを助け、体力や免疫力を高める。
- 具体例:米、小麦、とうもろこし、かぼちゃ、なつめ、栗、蜂蜜、きび、あずき、黒豆
酸味
- 味覚:酸っぱい
- 身体への作用:肝(かん)を助け、ストレスや疲労を解消し、消化を促進する。
- 具体例:梅干し、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、酢、トマト、パイナップル、イチゴ、キウイ
辛味
- 味覚:辛い
- 身体への作用:肺(はい)を助け、気の流れを良くし、風邪や咳などの症状を改善する。
- 具体例:ネギ、生姜、にんにく、唐辛子、ニラ、らっきょう、陳皮、大棗、桂皮
苦味
- 味覚:苦い
- 身体への作用:心(しん)を助け、心を落ち着かせ、不眠や動悸などの症状を改善する。
- 具体例:ゴーヤ、苦瓜、コーヒー、緑茶、チコリー、タンポポ、朝鮮人参、山査子
鹹味
- 味覚:しょっぱい
- 身体への作用:腎(じん)を助け、水分代謝を促進し、むくみや便秘などの症状を改善する。
- 具体例:海藻類(昆布、ひじき、わかめなど)、魚介類(シラス、いわし、あさりなど)、納豆、豆腐、味噌、醤油、塩