クロスフィットなどの高強度トレーニングや日常生活習慣によって引き起こされる内転筋機能不全について、その原因と症状をまとめます。
内転筋機能不全を疑う主な症状
- 太ももの内側や股関節付近の痛み:特に運動中や運動後に感じる
- 歩行時の違和感や不安定さ:ふらつきや脚のコントロールが難しい
- 股関節の動きにくさ:脚を開いたり閉じたりする動作が制限される
- スポーツパフォーマンスの低下:急な方向転換や加速が困難になる
- 姿勢の変化:がに股気味の歩き方になる
- 日常生活での不快感:長時間座った後の立ち上がりや階段の上り下りで痛みを感じる
原因
- 過度な使用と疲労:急激な方向転換やストップ動作の繰り返し、高強度トレーニングでの過度な負荷
- 筋力バランスの不均衡:外側の筋肉(大腿四頭筋や大腿筋膜張筋)との不均衡、体幹や股関節周辺の筋力低下
- 柔軟性の低下:ストレッチ不足による筋肉の硬直化
- 不適切な姿勢や動作:長時間の座位姿勢による内転筋の短縮、歩行時の不適切な姿勢や動作パターン
- 過去のケガや手術:足首の捻挫や脚の打撲、肉離れなどの影響
内転筋の機能不全を診断するための主な検査方法
1. アダクタースクイーズテスト
- 仰臥位で股関節を軽度屈曲させ、両膝の内側にタオルを挟む
- タオルを挟むように力を入れてもらう
- 痛みの有無や、タオルをしっかり挟めるかをチェック
2. 他動運動による内転運動・外転運動
- 背臥位で実施
- 股関節の内転運動と外転運動を誘導し評価
- 正常可動域は内転20°、外転45°
- 可動域制限や痛みがあれば内転筋群の短縮や炎症を疑う
- 骨盤の代償動作に注意し、反対側の骨盤を固定しながら評価
3. トーマステスト
- 背臥位で非検査側の股関節を屈曲させ、腰椎の前弯を消失させる
- 検査側の下肢が挙上したり、腰椎の前弯が増大すれば陽性
- 股関節屈曲筋(内転筋を含む)の短縮が考えられる
4. 両脚開脚テスト(BKFO test)
- 仰臥位で足の裏同士をつけ、股関節を開排
- 痛みの有無、開排制限をチェック
- 膝と床の距離が3.6cm以上で病的と判断
内転筋の種類、長内転筋、大内転筋、短内転筋の特徴
特性 | 長内転筋 | 大内転筋 | 短内転筋 |
---|---|---|---|
機能 | 股関節の内転、屈曲、内旋 | 股関節の内転、内旋、伸展 | 股関節の内転、屈曲、内旋 |
不調時の症状 | 鼠径部や大腿内側の痛み、股関節の可動域制限 | 大腿後面や殿部の痛み、歩行時の違和感 | 鼠径部周囲の圧痛、股関節の可動域制限 |
特徴 | 大内転筋の前側に位置し、骨盤の前側から起始 | 内転筋群の中で最大・最強、前部と後部に分かれる | 恥骨筋と長内転筋に覆われ、大内転筋の前側に位置 |
起始 | 恥骨上枝 | 前部:恥骨下枝、後部:坐骨枝の前面及び坐骨結節 | 恥骨下枝の下部 |
停止 | 大腿骨粗線の内側唇中部 | 大腿骨粗線の内側唇 | 大腿骨粗線の内側唇上部1/3 |
ストレッチ方法
- 四つ這い、股関節ストレッチ
- 四つ這いになり、片足を外側に伸ばす
- 背中を丸めずに、体を前後に動かして30秒間ストレッチ
- つま先の向きを変えて行う
- 開脚ストレッチ
- 足を大きく開いて座り、前屈する
- 20-30秒間キープし、1-2セット行う
- 台を使って内転筋と反対側の身体側面を伸ばすストレッチ
- 片脚を真横に開いて台に乗せる
- 反対側の腕を上に伸ばし、上体を開脚側に倒す
- 7秒間キープし、左右交互に行う
マッサージ方法
- ストレッチポールを使用: 内ももにポールを当てて、うつぶせになる、内転筋に当てて左右に動かす。
- セルフマッサージ:膝から股関節の付け根まで、指の腹でつまむようにほぐす
筋力トレーニング
サイドランジ:足を肩幅より大きく開き、腰を下ろす。重心を左右に動かし、20回を目安に行う
効果効能
- 姿勢改善:骨盤の安定性が向上し、正しい姿勢の維持に役立つ
- 下半身の引き締め:内ももが引き締まり、美脚効果が期待できる
- 冷え性・むくみの改善:血液やリンパの流れが促進され、むくみが改善される
- 歩行の安定:股関節の可動域が広がり、歩行時のふらつきが減少する
- 腰痛予防:骨盤の安定性が向上し、腰への負担が軽減される
- 代謝向上:基礎代謝が上がり、ダイエット効果が期待できる