以前に内部意識・外部意識についての記事を書きました。運動指導・リハビリの指導でもこの考え方を応用することができます。その方法、内的キューイング・外的キューイングを説明します。
内的キューイングと外的キューイングは、運動やトレーニングにおいて動作を指導する際に使われる2つの異なる方法です。それぞれの特徴を以下に説明します。
内的キューイング（Internal Cueing）
内的キューイングは、体の内部の感覚や動きを意識させる指示です。具体的には、筋肉の収縮や関節の動きに焦点を当てます。
- 例: 「腹筋を締める」「肩甲骨を寄せる」「膝を外側に押す」
- 利点: 自分の体の動きを細かく感じ取ることができ、フォームの改善に役立ちます。
- 欠点: 初心者には難しい場合があり、過度に意識しすぎると動作がぎこちなくなることがあります。
外的キューイング（External Cueing）
外的キューイングは、体の外部の目標や環境に焦点を当てる指示です。具体的には、動作の結果や目標に関連する指示を出します。
- 例: 「壁に向かってジャンプする」「バーを押し上げる」「地面を強く蹴る」
- 利点: 動作が自然になりやすく、初心者にも理解しやすいです。また、パフォーマンスの向上にもつながります。
- 欠点: 内部の動きを意識しにくくなることがあります。
使い分けのポイント
- 初心者: 外的キューイングを多用し、動作の結果に焦点を当てることで理解しやすくします。
- 中級者以上: 内的キューイングを取り入れ、フォームの細部を意識させることで動作の質を向上させます。
どちらのキューイングも適切に使い分けることで、効果的なトレーニング指導が可能です。
クロスフィットへの応用
クロスフィットにおける内的キューイングと外的キューイングの使い分けについて説明しますね。
内的キューイング
肩甲骨を下制して、骨盤前傾位を保って、など
体の内部の動きや筋肉の使い方に焦点を当て、具体的なポイントを支持する声かけです。動作がほぼ完成していて細かな修正をするときに有効です。
外的キューイング
足裏で地面を押すように、身体を１本の丸太のように、など
イメージや比喩を使った表現です。動作を習得する初期段階や、複数のポイントを同時に意識するのが難しい場合に有効です。
使い分けのポイント
- 初心者や動作習得の初期段階では、外的キューイングを用いることで、自然な動きを引き出しやすくなります。
- 熟練者や細かな修正が必要な場合には、内的キューイングが効果的です。
- クライアントのタイプによっても使い分けが必要です。論理的に説明されるのが好きな方は内的キューイングを好まれる場合もあります。
どちらのキューイングも大切で、クライアントの状況やレベルに応じて使い分けることが重要です。
運動初心者、動作指導の面から
運動初心者の指導は外的キューイングの方が入りやすい印象があります。トレーナーとしては勉強するほど内的キューイングで指示をいれたくなりますが、クライアントが理解できるか、実践できるかも考えなければなりません。
クロスフィットのトレーニングは、日常生活動作（ADL: Activities of Daily Living）を高強度にした筋トレが主です。運動初心者にも親しみやすく、実生活での動作改善にも役立ちます。
クロスフィットの動作と日常生活動作の関連性
- スクワット（しゃがむ動作）
- 日常生活: 椅子に座る、物を拾う
- 外的キューイング: 「お尻を後ろに引いて、膝がつま先を超えないように」
- デッドリフト（物を持ち上げる動作）
- 日常生活: 重い荷物を持ち上げる
- 外的キューイング: 「背中をまっすぐに保ち、膝を軽く曲げて」
- プッシュアップ（押す動作）
- 日常生活: ドアを押す、床から起き上がる
- 外的キューイング: 「体を一直線に保ち、肘を曲げて胸を床に近づける」
- プルアップ（引く動作）
- 日常生活: 高い場所から物を取る
- 外的キューイング: 「肩甲骨を寄せて、肘を曲げて体を引き上げる」
外的キューイングのポイント
- 視覚的キュー: 動作を実際に見せることで理解を深める
- 触覚的キュー: 手で体の位置を修正する
- 言語的キュー: 簡潔で具体的な言葉を使う
クロスフィットのトレーニングは、これらの動作を通じて日常生活の動作を強化し、運動初心者にも効果的に教えることができます。外的キューイングを活用することで、正しいフォームを維持しやすくなり、安全にトレーニングを進めることができます。
